聖⽊曜⽇〔主の晩餐〕 2020.4.9
聖⽊曜⽇の典礼ですが、その⽇は先ず、午前中に「聖⾹油のミサ」という、油を祝別するミサが司教座聖堂(カテドラル)で⾏われます。そのミサの為に司教様はご⾃分の教区の全ての司祭達を呼び集めます。そして、そのミサの中で司祭達は⾃分達が叙階された時の約束を更新しますが、それは独⾝と従順についての約束です。司祭達はその約束の更新を通して、神様とその⺠に仕える為に独⾝制と、所属する教区の司教様への従順を⽰し、それに従うことを表明します。そして司教様と共に三つの油を祝別します。それは⼊信の秘跡の為の聖⾹油と病者の秘跡の為の聖⾹油、また、祝別の為の聖⾹油です。その三つの油はイエス様が弟⼦達に命じられたこと、つまり、福⾳を宣べ伝えることや愛の掟を教えること、また、病気や悪霊に苦しめられている⼈々を助けること、そして、神様からの祝福を施すことを表します。まさに、そのミサを通して司祭は叙階の約束を更新し、その三つの油を頂いて再び⾃分に任せられた信者の共同体へと派遣されるのです。
その聖⽊曜⽇の夜、改めて派遣された司祭は⾃分の共同体と共に「主の最後の晩餐のミサ」を捧げます。そのミサの中で栄光の賛歌を歌う時、まず、「天のいと⾼き所には神に栄光」と歌うと、聖堂の鐘が鳴り響きます。それは、間もなく迎えるイエス様の受難を準備するしるしです。その後はオルガンなどの⼀切の楽器の伴奏は禁⽌されます。また、司祭は福⾳を読み、簡単な説教をやって、いわゆる「洗⾜式」と⾔われる儀式を⾏いますが、それは信者さんたちの⾜を洗うことです。伝統的に司祭は12 ⼈の信者さん達を選んで彼らの⾜を洗いますが、それはイエス様の愛を表す為のことです。かつて、イエス様は最後の晩餐で弟⼦達の⾜を洗われた後、彼らにもそのようにすることを命じられました。そして「互いに愛し合いなさい。」という⼤切な掟を与えて下さいました。そのイエス様に倣って、司祭は先ず、⾃分をへりくだって信者さんに仕える者とならなければならないことを新たに決⼼するようになります。また、その儀式を⾒つめる全ての信者さん、特に、選ばれてその儀式に直接参加する信者さん達は、イエス様の愛にもっと近づくことを決心すべきです。そのミサの最後には仮祭壇にご聖体を運んで安置し、それから、翌⽇の儀式が⾏われるまで、時間を分けて「聖体礼拝」をします。また、聖堂にある全ての聖像を紫の布で覆っておきますが、その仮祭壇のご聖体と覆われた聖像を⾒つめながら、私達は⾃分達の弱い信仰や様々な過ちと罪によってイエス様を奪われてしまったことと、その悲しみを黙想することになります。
さて、⽇本語で⾃分⾃⾝を指して⾔う時、「私、わたくし、僕」という⾔葉を使って⾔います。その中、僕(ぼく)という漢字は僕(しもべ)と⾔う意味を持っていますが、⽬下の⼈に向かって、或は、親しい⼈たちの間で使われる⾔葉だと思います。ところが、イエス様は弟⼦たちと最後の⾷事をする前、彼らの⾜を洗ってくださいました。それから、ご⾃⾝の⼀番⼤事な掟を教えられて、また、パンと葡萄酒の形でご⾃⾝の体と⾎を与えてくださいました。私たちが⾏っているミサの誕⽣はそういう次第でした。つまり、弟⼦たちにとっては先⽣、または、主と呼ばれるべきイエス様でしたが、ご⾃⾝を低くして、⾃ら僕となられたということです。それこそ愛の基ではないでしょうか。先⽣であり、主であるイエス様ご⾃⾝が僕として弟⼦たちの⾜を洗い、また、その愛の証としてご⾃⾝の命をパンと葡萄酒の形で与えてくださったのは、今の時代の私たちが学ぶべき姿ではないかと思います。併せて、私たちが⾏うミサという祭儀も互いに僕となろうとする愛に基づいているものであることも、皆が受け⼊れなければならないとも思います。事実、私たちのミサは、この世の中のどんな事よりも⼤事な事で、偉い⼈たちの晩餐ではなく、ただ、僕(しもべ)たちの晩餐なのです。その愛の晩餐であるミサは頑なな⼼をもって、機械的に参加し、時には、⾃分のスケジュールや気持ちによって参加の可否を決定できるようなものではありませんし、むしろ、私たちのすべての活動、特に、教会の⾊々な活動の礎なのです。イエス様が仕⽅なく、弟⼦たちの⾜を洗い、また、同じ気持ちでご⾃⾝の最後の晩餐を⾏い、そして、同じ⼼をもって⼗字架の死を受けられたはずがありません。そのイエス様の愛の御⼼を考えながら、これからもこのミサを、皆さんと共に切な⼼をもって⾏いたいと思います。
残念ですが、今年の主の晩餐のミサも、その中での洗⾜式も、皆さんと共にすることができません。しかし、私たちは聖霊によって⼀つに結ばれている⼈たちです。⼈⽣の様々な⼗字架の道を歩んでいる皆さんの⾜を思い起こしながら、今⽇の美しいミサを捧げます。また、皆さんに神様の豊かな恵みと⼒が与えられるよう、お祈りいたします。
カトリック二俣川教会主任司祭 ヤコブ姜 真求
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24624_2020.4.9『聖木曜日(主の晩餐)』姜神父お説教
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