ようやく、先週の主日までの緊急事態宣言が解除され、4月からは教会の公開ミサも再開できるようになりました。この新型コロナウイルス感染症がこれほど長くなるとは思いませんでしたが、まだ、状況がどう変わるかは誰も分からないので、更に注意を払うことが必要だと思います。併せて、この病気との1年以上の戦いの中で、私たちは自分の行動がどれほど重要な事かを学んできました。しかし、そういった慎重な思いやりや行動が、逆に、信仰生活の委縮に繋がっているのではという恐れもあります。信仰への関心が益々弱まっている現代の世の中で、この病気は個人と個人との交わりは勿論、神様との交わりも妨げているような気がします。今度のミサの再開を持って、神様が私たち一人一人をどれほど大事にしておられるのか、また、その神様を私たちがどんな心や姿勢で敬うべきかについて、改めて考えるようになったら幸いと思います。

さて、今日はイエス様のエルサレム入城を記念する枝の主日です。今日の典礼の中では、それぞれ全然違う場面を伝える二つの福音が読まれますが、先ずミサの前、枝の祝別の時、わたしたちは「エルサレム入城の福音」と呼ばれる福音を耳にします。その福音でイエス様は「誰も乗ったことのない子ろば」に乗られ、大勢の群衆の歓迎の叫びの中でエルサレム城に入られました。その時、多くの人が自分の服を道に敷き、ほかの人々は野原から葉の付いた枝を切ってきて道に敷いたりしました。それは何と荘厳で感激的な様子だったでしょう。きっと人々は皆、待ちに待ったメシアが来られたと思い、大きな期待をイエス様に掛けていたはずです。また、その群衆に囲まれていた弟子たちも胸を大きく張ることができたでしょう。しかし、その期待や誇り(誇らしさ)は数日後、散々に砕け散ってしまいました。今日の二つ目の福音は、まさしくその悲哀を物語っています。

「主イエス・キリストの受難」と言われる今日の二つ目の福音は、イエス様とピラトの出会いから始まります。そこでイエス様は、権力や世間の評価にこだわっていたピラトの不正な裁判を受けられ、更に、イスラエルの指導者たちや彼らにそそのかされた群衆から死刑を求める激しい叫びを耳にされました。しかし、イエス様は何も反発せず、そのまま十字架の死を受け止められました。ある観点から見たら、そのピラトや民の指導者たちのたくらみは当然なことだったと思われますが、群衆はどうでしょうか。彼らは数日前、イエス様を喜んで迎え、イエス様と共にエルサレム城へ向かったでしょう。しかし、僅か数日後、彼らは自分たちの不信仰や愚かさを赤裸々にあらわにし、イエス様を裏切ったのです。でも、イエス様はそのような死を通して、罪の赦しによる救いを御父と共に全うされました。それが神様の愛で、今日の二つの福音は私たちの不信仰や愚かさ、また、神様の変わることのない愛を見せてくれるのです。

ところで、「憎しみより怖いのは無関心だ。」という言葉がありますが、イエス様に向かった　あの群衆の歓迎と裏切りも、関心があったからこその出来事と言えるでしょう。しかし、果たして、私たちは神様や教会のことについて、どれほど関心をもっているのでしょうか。勿論、神様はいつも私たちに目を注いでおられるし、教会の外での信者の皆さんの活動も神様はご存じだと思います。でも、ミサが中止されても、再開されても、他人のことのように扱われるのは、何と悲しいことでしょう。信仰のある人たちの人生は、ミサから力を得、ミサによって支えられるものだと言っても過言ではありません。ミサこそ、私たちが神様にささげる一番大切な務めであり、奉仕なのです。

枝の主日になると、昔、わたしの母が聞かせてくれた話が頭をよぎります。母は、「なぜ、枝を十字架にかけておくのか。」という私の質問について、「それは私たちの為に苦しみを受けられたイエス様に、小さな木陰を作って差し上げるためだ。」と答えてくれました。それが事実かどうかにかかわらず、公開ミサが中止されるというのは、神様とイエス様にささげる最も大事な奉仕ができなくなるという意味でもあります。復活祭から再開される公開のミサが、イエス様に差し上げる小さな木陰となって、私たちのためのイエス様の苦しみを少しでも慰めるものとなったら幸いと思います。改めて、公開ミサができるようにしてくださった神様に感謝を捧げつつ、その公開ミサへの心の準備が着実に整うよう、お祈りいたします。

☆原文のＰＤＦファイルはこちらをクリックしてください。⇒2021年3月28日姜神父様のお説教　

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★２０２１年四旬節教皇メッセージはこちら　＝＞https://www.cbcj.catholic.jp/2021/02/15/22109/

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