連日、伝えられるニュースのほとんどが、新型コロナウイルスに関する話で、この頃、世界の多くの人々は、まるで、この病気の情報の洪水の中にいるようです。一日でも早くこの病気から解放されたいですが、なかなかその道が見えないので、心配や不安は益々大きくなっています。神様の慈しみと憐れみは勿論、全ての人が神様の霊の導きに導かれるように願い、祈るだけです。

さて、信者の皆さんも感じておられると思いますが、この新型コロナウイルスは今までの人間の生活を様々な姿に変えているような気がします。その中には、隣の人との距離を置くこととか、常にマスクを使うことなど、正しくて適切なこともありますが、病気について心配のあまり、「何々警察」という新しい言葉が使われるほど過敏な様子も見られます。実は、時々私自身もスーパーで隣の人達のマスクや騒いでいる子供達の声が気になったりする時があります。人間は共に生きるべきものなのに、この病気のせいで他人に対する警戒心とか距離感がもっと大きくなっている現実に、寂しさを通り越して怖ささえ感じられます。それで、この病気に対しては勿論、私たちの心の動きにも気を遣うべきだと思います。何と言っても、人間の社会は人がいること、つまり、存在することによって社会が作られ、また、守られるからです。それは天地創造のときからの神様のお望みで、神様は人々の中におられ、いつも人をご自分のもとに集めようとしておられます。そういう意味で、今日の三つの御言葉は、今の危機の時代を過ごしている私たち人間に向かう神様の御心を表していると思います。

今日の福音で、イエス様は二匹の魚と五つのパンをもって、五千人以上の群衆を満腹させてくださいました。福音は洗礼者ヨハネの死の知らせから始まりますが、それを耳にされたイエス様は船に乗って、人里離れた所に行かれました。しかし、イエス様の行方は群衆の知るところとなり、群衆は陸路を歩いてイエス様の所に集まりました。きっと、群衆はヨハネを失って、自分たちの心をどこに置いたらよいのかさえ分からなかったのでしょう。イエス様はその人達がご自分のもとに集まるよう導いてくださったに違いありません。陸路を歩いてきた群衆をご覧になって、イエス様は「深く憐れみ、その中の病人を癒やして」くださいました。そして、夕暮れになった時、弟子たちは群衆を解散して自分たちで食べ物を求めることをイエス様に提案したわけです。弟子たちの提案は当然で合理的なことでしたが、イエス様は弟子たちに「あなたがたが彼らに食べる物を与えなさい。」とおっしゃいました。それを聞いた弟子たちは、自分たちには二匹の魚と五つのパンしかないことを申し上げましたが、それはイエス様の理不尽な要求に対する一つの反発のように見えます。しかし、イエス様は弟子たちに、ご自分と彼らのための食べ物を「持ってきなさい。」と言われ、それを手にもって「天を仰いで賛美の祈りを唱えました。」それから、それを弟子たちに渡し、彼らが群衆に与えるようにと言われました。そして、その食べ物を頂いた五千人以上の群衆は皆満腹し、そのパンくずを集めると、十二の籠いっぱいになったのです。

一見すると、弟子達とイエス様は同じこと、つまり、群衆が飢えに苦しむことを心配しているように見えます。勿論内容としてはそうですが、実際、イエス様にとって、せっかくご自分のところに集まった群衆がそこを去り、自分のことを忘れて、肉体の食べ物や世の中の様々な悩みと苦しみに落ち込むことがもっと心配なことだったでしょう。そこで、イエス様は弟子たちに群衆の食べるものを与えるようにと命令されたのです。また、その出来事が弟子たちにも群衆にも、「誰もイエス様から離れたら、何もできない。」という事実のしるしとなることを望まれたとも思われます。言い換えれば、世の中の何物も神様から人を引き離すことはできないということです。

これは、今日の第２朗読が伝えていることと全く同じことです。使徒パウロは、誰も、また、何ものもキリストの愛、すなわち、イエス様を通して現わされた神様の愛から、神様を信じている人を引き離すことができないと、強く教えています。パウロは艱難、苦しみ、迫害、飢え、裸、危険、剣、また、死、命、天使、支配するもの、現在のものや未来のもの、力ある者、高い所にいる者、低い所にいる者、或は、他のどんな被造物という、多様な言葉を挙げていますが、実際、それらはパウロ自身が経験したことでもあるし、または、世の中の様々な宗教や理論に基づいたものでもあります。そのように考えたら、神様は私たち信仰のある人たちがご自分から離れることと、そのようにさせる全てのものを、決して許されないということが分かります。神様は今日の第１朗読のように、私たちが世の中の色々なものにさ迷うことを望まれない方です。むしろ、それらすべてにまさるご自分のもとに私たちが集まることを望んでおられるので、ご自分の貴重な独り子さえ惜しまず、私たちのために与えてくださったのでしょう。イエス様は神様から遣わされて、私たちが神様のもとに集まるようにと私たちを招かれました。それに応えて生きる人は、イエス様の愛、神様の愛から離れることのないように自らを戒め、また、良い業を行うために努力するはずです。そして、そういう生き方によって、もっと多くの人々に、神様の愛と信仰の道を伝えることができると思います。

さて、新型コロナウイルスは私たちの普段の生活様式を変えていきますが、教会の生活も例外ではありません。今、私たちは地区ごとのミサを捧げていますが、それができるのは、勿論、神様の導きや愛のおかげだと思いますが、コロナ対策チームや各地区の世話人、また、連絡員、そして、自発的に奉仕してくださる方々のおかげでもあると思い、感謝いたします。このような奉仕を通して、一人でも多くの信者が安心してミサに与ることができるでしょう。やはり、今日のイエス様の御心通り、色々な奉仕者を通して、私たちはイエス様の大事なミサから離れることなく、むしろ、イエス様の愛の晩餐、或は、五千人以上の群衆の満腹の現場に近づくことができるのだと思います。きっと、今日の福音の弟子たちは、自分たちが群衆を散らす者ではなく、かえって、多くの人たちをイエス様のところに集める人であることが分かったでしょう。そして、群衆も同じことを悟ったと思います。特に今のこの状況の中で、地区の家族がミサに与れるよう教会の奉仕に努めるのは、何と大事で恵み豊かな任務でしょう。確かに、まだ、希望が見えない状況の中で、私たちのそういう奉仕は、信者の皆さんに神様の希望と慰め、愛と慈しみをもたらしてくれると確信します。イエス様の愛は偉い人たちの素晴らしい捧げものや能力や知識ではなく、私たちがイエス様ご自身のすぐそばに「いること、また、留まること」を望んでおられます。このミサの中で、私たちが皆で集まれることを願いながら、神様の助けと力を祈り求めましょう。

☆原文のＰＤＦファイルはこちらをクリックしてください。⇒　2020年8月2日姜神父様のお説教

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